3月の記録

このブログには、家庭菜園に関することしか書かないと決めていたのだが、今回に限り野菜以外のことも書こうと思う。
3月始めに実家に一度帰り、そろそろブログを更新しないと、と思っていた3月11日、東北関東大震災が発生した。自分も大きな震災の体験があるが、被災地の映像からわかる悲惨さは桁違いで目を覆うばかりだ。
それに比べれば結果的には大した事にはなっていないが、私が住むボロ建物は震度5にしては激しく揺れ、食器がかなり割れて、散乱した。揺れはじめで子供を抱きかかえて玄関にダッシュし、食器が割れる音を聞きながらダウンジャケットを頭からかぶって泣き叫ぶ子供を抱いて待った。揺れが震度5ぐらいであろうことは想像できたが、これ以上強くなったらこの建物は終わりだ、とにかくこれ以上の強さにならないで終わって欲しい、とひたすら祈ったものだ。長い長い揺れだった。

その後、家人の勤める会社の計らいもあって、一時的に関西に疎開した。3月15日の夜のことだ。新幹線には20時過ぎにも関わらず同じような乳幼児連れが沢山の荷物を持って乗り込み、異様な光景だった。関西に到着すると、早速、家人の友人でもあるRさんがウィークリーマンションで生活を始める手助けをしてくれた。何度も買い物に連れて行ってくれ、ホテルからの荷物をマンションに運んでくれただけではなく、その後も何度も自宅に招き、あちこちへ連れて行ってくれたり。お陰で、急速に心身の状態が安定し、狭いウィークリーマンションに一家でひしめき合う生活を「学生みたいだね。」と家人と笑える程に回復した。でなければ、いくら家人に気遣ってもらっているとはいえ、疲れ切った状態で不自由な生活を不自由に開始し、きっとめげてしまったであろう。
一方、実家は計画停電の対象地になっており、当初、電車もなかなか開通しなかった。疎開に当たっては、なんだか置き去りにするようで、気が咎めたが、ココアがいるから疎開などできないという。仕方がない。自分より小さな犬が来ても全力で逃げる弱虫なココアだが、頑張って心の支えになって欲しい。

ということで、呑気に野菜の記録を書いていられる状態ではなかった訳だ。
急に決まった疎開に当たって、夕暮れの中、キャベツ、ブロッコリの苗をまだ双葉の状態のものまで、無理矢理定植した。その後、キャベツ1つ、ブロッコリ側芽、ネグレスコ3つを急いで収穫。キャベツ、ブロッコリ、ネグレスコ3つのうち2つまで入れたら、それだけで手提げ袋一杯になったので、とりあえずそれを関西に持参。ネグレスコ1つはダメもとで自宅の冷蔵庫に入れておいた。一緒にナメクジ3匹が疎開してきたっけ。
ベランダのプランターローストチキンのケースの中で発芽したパプリカ、ナスは絶望的だ。それでも、家人は時々仕事で帰ってくるから、なんとか生き延びて欲しいと思い、プランターは鉢ごとビニール袋2重に多い、水をジョウロ2杯ずつ注ぐ。ローストチキンのケースにもあふれんばかりに水を入れた。ごめんよ、ごめんよと心の中で謝りながら。


そして25日になった。この日、家人は出張で上京し、自宅にも荷物を取りに立ち寄ると言っていた。持ってきてもらいたい物をリスト化しろというので、メールにアイロン(鬼のようなオーダーだ)、布団乾燥機(これもひどい)、おたま、菜箸、ジップロック、皮むき器などを列挙した後、メールの最後で、おずおずと野菜の水やりをお願いしておいた。昼頃、水やり以外にして欲しいことはあるかというメールが来た。滅相もない。水やりだけで、十分です、はい。あ、まあ、あやめ雪が生きていて、食べられるようなものがあれば、持ってきて欲しいけど。

夕方、さらにメールが送られてきた。見ればウェブアルバムになっている。
パプリカの苗から始まり、ベランダのプランター1つ1つ、ローストチキンのケースに発芽したパプリカ・ナス、一階の畑の野菜達が、いつも私が写真を撮るような形で、対象ごとに漏れなく丁寧に9枚の写真に収められていた。どれも、今のところ元気らしい。以下はその一部だ。キャベツなどは収穫時期を迎えていることもわかる。






忙しいのに、仕事の合間に全部の鉢と畑に水やりしてくれただけではなくて、こんな写真まで撮ってくれたのか。つまらないことかもしれないが、正直、その優しさにはちょっと感動した。もっと大事なことを色々してやっているだろうと反論されそうだが(苦笑)。
その後、最終の新幹線で関西に戻ってきた家人は、巨大なスーツケースにアイロン、布団乾燥機、おたま、菜箸などの列挙されたものを全て詰めて運んで来た。
さらに、こんなものまで。


あやめ雪5つ、冷蔵庫に残っていたネグレスコ(意外に長持ちしていたね)、トマトなどの野菜が出てきた。一体、何キロの荷物だったのだろう。さすがに、疲れ切っていた。


そして28日。家人がまた仕事で上京した。深夜に帰宅した鞄の中から出てきたものはこれ。

巨大ホウレン草袋一杯と、ブロッコリ、芽キャベツ芽キャベツはそろそろ終わりの様子らしい。ブロッコリの側芽を摘むのは案外時間がかかるのだが、真面目な性格の家人のこと、どうせ取り漏らしもなく、きちんと大きいものを全部摘んできたのだろう。有り難い話だ。
ちなみに、この巨大ホウレン草、疎開暮らしでは料理道具も不足しているので、Rさんにお願いしてキッチンをお借りし、家人の好きなサグチキンにした。下げて来たのだから、それぐらいの見返りはないとね。